シトロエン2CV チャールストン
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オススメフランス車
シトロエン2CV6チャールストン 1987
>>走る哲学?小屋? 2001.6〜2005.6
>>突然の来訪者?
206に乗りつつもやはりヒット車に乗るつまらなさや古き良き仏車を求める心は大きくなるばかり。そんな折り、京都のアウトパラスさんに上物があるのをネットで発見。早速見に行くことにした。68万、走行なんと1.2万キロ、某メーカーの実験車両・・・車庫保管で外装はバッチリ、でも経年でお約束のゴム類はガビガビの変な状態の2CV赤黒。あれよあれよとその場で成約。はれて我が家の仲間入りを果たした。

>>ついにやってきた仏車のソウル
車検と整備が終わったとの報告を受け、500系のぞみで一路京都へ向かう。引き取りは6月の下旬だった。もうすでに昼間は30度近くなる時期だ。2CV、こんな時期のいきなりの長距離走である。引き取りは夕方。京都山科の仮ナン付けた2CVはそのまま京都市内を出て彦根へ向かう。2CVをこんな長距離を運転するのは初めてだ。彦根までなんとか着いて、ここでいったん宿泊。
翌朝、彦根を出発、途中岐阜で名鉄を見たりしながら、初夏の陽射しの中順調に上京。尾張一宮から東名に入り、その日のうちに実家へ到着。ふあー楽しかった。

シトロエン2CV チャールストン
▲京都からの自走引き取り。山科の仮ナンバーで立ち寄る名鉄黒野駅。今は無き車輌達との懐かしい風景。2001.7
>>これは仏車の哲学そのもの
詳しいクルマの成り立ちはこのページの左端にある紹介コーナーに譲るが、それだけだはこのクルマは語り尽くせない。思想、設計、徹底した合理性・・・。自由・平等・友愛が仏蘭西革命以来のフランス人のこころにある大前提であるならば、この3原則を2CVはみごとに守っている。このクルマは設計自体がフランスの基本哲学だ。だから、理解出来ない人には一生できない。賛同したらその哲学のおもしろさや奥深さに感銘する。

>>スッカラカン
本来は農民のために作られた農具のようなクルマだった2CVだが、やがてその簡潔さと低価格で若者達に人気を博すようになった。彼らはこの「何も付いていない」ことに、スッカラカンの自由を感じ取ったのだろう。道路と一体になったような閉鎖感の少ない車内や、トップを開ければ拡がる無限大の頭上空間・・・。クルマはどれでもどんな乗り方も自由だが、この2CVはことさら自由な感じがするのだ。それはクルマというより、もはや民具のような外観や設計がもたらす親近感にもよるのだろう。

>>潔い
2CVの造形には意味がある。イタリア車のような直感的・芸術的な美ではなく、独逸のような理論的な機能美でもない。北欧のようなモダニズムでもない。2CVにあるのは目標に対して最善の、しかももっとも簡潔な方法をとっただけの「機能が造形になっただけ」という潔さがある。例えばボンネットには通常はヒンジが必要だが、2CVはヒンジパーツがなくて、ボンネットの板の端を丸めてあるだけだとか、そういったオドロキ、サプライズだらけなのだ(細かい話は別項に譲るとしよう)。2CVには徹底した機能主義が司る造形として、神懸かり的な美しさを宿していると思う。

シトロエン2CV チャールストン
まるでフランス?な四谷の迎賓館界隈にて。すずしげに見えるがすでに気温は高く、走る小屋のような2CVにはキツイ。2001.7 

シトロエン 2CV6チャールストンはこんなクルマ
今村幸治郎先生の展覧会が行われた桐生の「有鄰館(ゆうりんかん)」にて。レンガとのマッチングが良い。正しい組み合わせという感じがする。2001.9 
※2CV6 CLUB

>>素晴らしい乗り心地
2CVは、前述の如く設計思想が優しい。誰もが所有でき、誰もが運転できるように設計された。それはそのまま優しい乗り心地にも現れている。2CV6は後期型とも言えるが、それでも普通の基準から比べれば柔らかいのに、初期のタイプAZなどは、信じられないほどフワフワの脚回りを持っていた。柔らかいのクルマは酔う、とこの国では思われているが、そんなことはない!

>>素晴らしい椅子
これまた前述だけど、椅子が素晴らしい。驚くことに鉄パイプ+吊りゴム!だけの「ハンモック」状のこの簡潔きわまりない椅子、でも極上の座り心地なのだ!いろんなところで述べてるけれど、ただ柔らかいのではなく、体圧を四散して身体のどこにも負担をかけず、柔らかく椅子が受け止めてくれるフランス椅子。2CVもまさにそれ。リクライニングすらしない、バスの運転手のような姿勢を強要する椅子なのに、腰には負担がかからない。こんな椅子を50年以上前から作ってるんだから、逆立ちしたって日本車の椅子が敵うわけないのだなあ。

2CVの[CV]というのは馬力よって課金を変える、課税馬力<Cheval fiscal>の略。最初の2CVは9馬力だったので、課税馬力2馬力=2CVという車名になった。
2CVの登場には有名な逸話がある。当時のシトロエン副社長、ピエール・ブーランジェは、戦前のとあるフランスの田舎で驚愕する。パリ市内はクルマで溢れているというのに田舎では未だに手押し車が荷物を運んでいたからだ。そこで彼は早速エンジニア達にある条件を提示し、それをクリアするクルマを作るように命じる。「乗員4人が無理なく乗れて、50キロのジャガイモが運べて、かごに満載した卵をどんな悪路でも割らずに、50キロ出せるクルマ」。を作りなさいと。エンジニア達は素晴らしい頭脳でこの難問と闘い、そして大戦を挟んだ1948年に、ついに2CVは登場した。でも時の大統領は、2CVをみて言葉を失った。お世辞にも美しいとは言えない、ブリキ細工みたいなそのクルマを。だが、このクルマのターゲットである農民たちは、このクルマの価値を真っ先に見いだした。2CVはやがてフランス全土を埋め尽くす・・・。
誰もが所有でき、誰もが運転でき、保守できることように、エンジンは整備性が良く部品点数も少ない空冷フラットツイン。駆動方式は部品の少ないFF。ボンネットは波板で強度を出した1枚板。椅子はパイプに布をかけただけ。脚回りは前後のタイヤに対して1本のみのバネを引き合うことによって水平を保つ前後関連懸架。エンジンの割に大きく4人がゆったり乗れる車体。このように部品をいかに減らすか、そしていかに簡潔に設計するかということに心血と努力がつぎ込まれている。それでいてエンジンはガスケットなしで組まれたアルミエンジンを採用するなど、お金を掛けるところには惜しげなく投入している。その結果、2CVは「これで充分」な最小限の性能と車体、耐久性、素晴らしい乗り心地を手に入れた。ブーランジェの優しさにあふれた注文はみごとに達成されたのだ。
2CVはその後、当初の375CCから425CC、602CCとエンジンを拡大し(602CCモデルが2CV6と呼ばれる)、脚回りや車体にわずかながらの改良を加えつつ、結局1990年に生産を終了した。その間50年以上ほぼ基本的には何も変わらずに!
2CVチャールストンは、2CVの末期に追加された限定車の一種として1980年に登場。昔日のブガッティのような洒落た塗り分けで、ただでさえクラシックなデザインをさらに引き立てている。はじめは限定だったが好評のためそのままカタログモデルとなり、2CV自体が生産中止となるときまで販売された。赤×黒、灰×黒、黄×黒の各色があった。

▲2001.10 FBM。チャールストンは日本ではよく見かける仕様だが、ご当地欧州では、とことん実用車である2CVの高級仕様たるチャールストンは実はあまり見ない。なお僕の2CVは手前の。

>>速い?
602CC、たった29馬力。そりゃあ現代の路上でも限りなく遅い乗用車の一種には違いない。たしかに出足は厳しい。ローは一瞬で吹けきる。で、慌てて2速に入れれば、日常の都市の流れにも充分ついていけるのだ。たしかにアクセルをまさに床まで踏みつけなくちゃならないけど、でも高速道路だってしかも登坂レーンがあるほどキツイ位の坂じゃない限りは、100キロ以上出せるし、流れには乗れる。10年以上前に、中央道の下り坂で大人4人乗りの2CVに120キロ以上で抜かれたことあって度肝抜かれたけど、今ならわかる。それは出来る。下りなら(W)。

>>ほんとに602CC?
常々クルマはトルクだと言い続けているけど、この2CVもそれが間違いじゃないことを教えてくれる。国産の軽自動車のマニュアル運転したことある方ならわかると思うけど、とにかくパワー・トルクの線が細いので発進に気を使うんですよね。アクセルを開け気味にしないと、すぐにエンストしちゃう。まあ軽に限らずホンダなどシビックまでそうだからなあ・・・。ところが!2CVはスゴイ。たった602CCなのに、アイドリング状態からクラッチをゆっくりつなげば動き出す。だからルーズにクラッチ操作してもエンストした試しがない。これも運転が疲れない要因の一つでもあるのだ。

>>楽しい
フラットツイン・602CCのブリキ細工みたいなこのクルマと、280馬力のスープラどっちが楽しいかって聞かれたらどうしますか。でも2CVの面白さは、馬力で測れないところにある!ちっぽけなエンジンを壊れるほど回して走れば、まるで空冷バイクのようにヒューンというノイズ+人間の鼓動みたいで、こころとシンクロするフラットツインのバタバタ音が、これがまた官能的ですらある。よほどいろんなクルマより。バイクが好きな人にはわかるかも知れない。一体感のようなものである。アクセルを通じて、エンジンの中でたしかに石油が燃え、そこでパワーが生み出されているのを感じるのだ。内燃機関を操っているのだという感覚がすごく濃いのである。そして変わった生え方のシフトノブを前後にガチャガチャ動かして、いくらトルクがあるとはいえ絶対的に小さなエンジン故の狭いパワーバンドを捜しながらの運転は、踏めば進むだけのつまんないエンジンを積んだ車よりもよっぽど面白い。

左:2002年のフレンチブルーにて。天気はこんなキリ模様。会場で手に入れたホワイトレンズのウインカーにしたらクラシック感が倍増、なかなか良い!
▲我が家に収まる2CVの図。夕暮れの路面を、イエローバルブが優しく照らし出す。2003.11
下2つ:2CVの秋の姿を二題。それぞれ駒沢公園、代々木公園。くたびれてきた外観に差し込む低めの光。2CVにはやはり秋冬が似合う。2003.11
>>疲れない
どうみてもブリキ細工。安っぽさ炸裂の民具のような実用車。ところがフランス車の常、2CVのような底辺のクルマでも、フランス車の持つ「無疲労性能」はちゃんと有している。しかも高い次元で。
疲れない要因は何度も書いてきた。すなわちよい乗り心地、よい椅子なのだけれど、それ以外に細かい要素が積み重なって、疲れないクルマを司っていく。視界や、前述のクラッチワークの容易さ、直進性などである。2CVは外界との遮断が殆ど出来ていない(W)ので、音、そして夏場に容赦なく入ってくる風、そして暑さといった要素以外は「快適」なので、秋冬は2CVの素晴らしさが堪能できる。見た目を裏切る疲れ無さ。
国産なら小さいクルマ・安いクルマはほとんどといってイイほど疲れる。しかもハンパじゃなく。2CVなら燃料の保つ限り走ることができる。

>>走る海の家
でもどうにもならないのが暑さ。2CVはほんとうに夏、暑い。エンジンの熱はバンバン車内に入って来る。換気したくても後ろのドアの窓は開かない。前のドアの窓だって開いてもたかがしれてる。ベンチレータを全開にしたって、停まれば大変なことになる。2CV自体は最近の酷暑、39度でも大丈夫なのに、中の人間が先にダウンします。とほほ。
そんな夏の2CVに、そこで登場するのがスダレ。屋根は開くけど熱射病になっちゃうので、誰が考えたのかスダレを掛けて走るのです。これが涼しい!スダレ越しに入る夏の陽射し、うちわで扇いで、アイスバーで涼をとる・・・ありゃ。こりゃ海の家だ、そう、2CVは走る海の家なのです。

>>こたつクルマ
じゃあ冬はあったかいのかな、ってそんなことないのが2CVなのですなあ。基本が空冷なので水冷と違ってヒーターが弱い。循環する水が無いからですね。で、エンジンも小さいから発熱量が少ない。外気の寒さに負ける。ゆえに車内は寒いのである。
まあ実際は冬でも別段凍えるほどって訳ではないし、エンジンからの熱気を段階的に調整できる機能があって(これがヒーターがわり)、それをマックスにすれば外気が氷点下10度でも寒くはないけれど、でもそれよりもそこかしこが立て付けの悪い家みたいにスキマだらけなので、結局は膝掛けが必需品。これならわずかな熱気を蓄積できる。ね、これはコタツでしょう?フランス車なのに妙にスダレとかコタツとかっていう発想が似合うんだなあ(W

SPEC
全長*全幅*全高:
3780*1480*1600・
ホイールベース:2400
車重:590キロ
エンジン:602ccF2 OHV
最高出力:29ps/5750rpm

最大トルク:
4.0mkg/3500rpm
生産国:フランス
新車当時の価格:--万円
スペックは日本仕様
▲これが最初期の2CV。タイプAZと呼ばれる。前ドアは逆ヒンジ。簡単に外せる。※
>>未来へ向かって
ちょっと大げさな感じだけど、2CVは未来に向かっていると思う。化石燃料の乗り物が無くなる直前の昨今、もはやいきつくところまで来てしまった感のある「自動車」というものが向かうべき方向は何なのだろう。いくら燃費が上がり、排気ガスがキレイになったって、台数が増えてしかも台あたりの排気量が増えていれば一向に環境が良くなるはずがない。そして先進国からわたっていくクルマ達で途上国の人達が幸せになるけれど、でも地球の汚染は進むばかり。
さあどうすればいいのだろうか。僕は2CVにひとつの答えを見る。安全、環境をうたって拡大・重量化していくばかりのクルマたちは、それを補うためにパワーを上げていく。必然重くなり、安全化が必要になる。これって悪循環じゃないのか。プラスプラスで作っているだけだ。もっと簡単に出来ないのものか。そこで2CVはどうか。2CVは簡潔すぎるから、今の時代にマッチした「必要装備」を与え、エンジンは小さく、車体は大きく効率化を極め、軽さ故に燃費も良くなる。車体は当然現代水準の安全性を持たせよう・・・。小型車でも基本性能は高く、不必要な内装の見栄えの良さなどよりかは椅子や乗り心地といった感覚的な性能にお金をかける・・・すべてがその方向に向かう必要はないけど、ひとつの答えとして、2CVのような簡潔なクルマがあってもいいのではないか?とことん効率化を極めた、零戦のようなマイナスマイナスで発想するというクルマがあっても。まあ零戦みたいに装甲薄くっちゃいけないけど!

>>それそのもの
2CVはスゴイクルマなのであります。シトロエンの設計者が言った言葉に、「シトロエン2CVは自動車ではない、むしろ2CVという乗り物そのものだ」というのがあるが、言い得ていると思う。クルマという条件:エンジン+タイヤが備わっているだけで、2CVは確かにクルマという概念を超越しているかもしれない。それが1948年という遙か彼方に生まれたということに、シトロエンへの尊敬の念は止まないのである。

>>達観
2CVというクルマは、受け入れられれば「クルマなんてこれでいい」と思えてしまう。暑いの寒いの我慢すれば、日常の足として実用に足るから(さすがに近年の暑さは耐えきれないけど!)。でも、暑ければ汗を流し、寒ければ毛布を羽織らなければならないクルマでもあり、春夏秋冬の空気や風を受け止める事もできる風流なクルマでもある。だから、2CVに対して許せてしまえば、クルマに対してまるで仙人みたいな気分になる。確かにそうだ。この不便きわまりないクルマを使うことは、有る意味クルマへの悟り・達観を開くようなものかもしれないからだ。こんな何もないクルマ、耐えられない人にはまったくもって耐えきれないのだから。
でも悟り、達観といってもそれは価値観の相違であるだけの話である。これを受け入れられるか、そうでないかだけの。

▲タイプAZの後ろ姿。トランクまでホロ!。※
▲2CVチャールストン/クラブのメーターパネル。優雅なデザイン。
▲チャールストンのダッシュ。別ページで操作系の解説してます。※
▲2CVチャールストン赤黒のカタログ。俗に言う赤ベース。僕の黒ベースの赤黒とは配色が異なる。※
●写真は特記(※)以外はすべて本人撮影。
▲2CVはプロモーション的に、ラリーレイドを行った。本格的なラリーではなく、集団でかたまってサポートして貰いながら砂漠を越える、冒険旅行のようなものだったが。これは1973年の参加者の一部。穴のあいた板はスタック時の脱出用。※
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