シトロエンBX 16TRS
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オススメフランス車
シトロエンBX16TRS 1986(ボビン)
>>操作するだけで楽しかった最後のシトロエン
>>持っていって下さい
友人猫澤君は自分のクルマをいよいよ手に入れることになった。そんな彼が探してきたのがこのBX16TRSだった。某中古車雑誌のオークションコーナーで競り落とし、いざそのお店へ行ったら、まったくフランス車とは縁のない走り屋系のお店だったそうだ。当然現状渡しだったのだけど、まあ店からすれば得体の知れないどこかの国の変なクルマ、早く持っていってというところだったのかも知れない。

>>下血、そしてリフレッシュ
そんな状態のBXであったから、喜んで乗っていたある日に彼の勤め先の駐車場でハイドロ車の血液たるLHMを大量下血(分かりやすく言えば、ダダ漏れ)。その修理も兼ねて、結局脚回りをリフレッシュすることになった。ハイドロ車は普通のクルマと違いバネを使っていない代わりに空気とオイルで出来た「スフェア」という玉を各車輪に一個づつ装着している。これにオイルを送り込む心臓とも言えるポンプも含めて、交換すると、ハイドロ車はもとの乗り心地を取り戻せるのである。

>>ボビンメータと難しい操作
このBXは初期型モデルで、俗に「ボビン」と呼ばれる。由来はふつうは針かデジタルのスピードメータが、ボビン状の円筒形が回ることで表示するという構造になっているから。アナログデジタルともいえる仕組み。それに限らず、シーソー型のウインカースイッチなど、レクチャー無しでは絶対乗れない操作系もまた、初期型BXの特徴だった。理想主義で独善的なフランス車の色がまだ濃く残っていた。

▲北海道の直線道路を快走するボビン号。こんな広い風景はフランスのだだ広さを連想させる。当然、BXはとてもよく似合う。
>>他のBXと違う椅子!
BXは大学のバイト先の知り合い(アルファ75乗り)が乗っていたのでまったく接したことがなかったわけでは無かったので、このボビンBXの椅子が彼のBX(中期型・19TRi)と違うのはすぐにわかった。87年型からの中期型(フェイズ2)でさえ充分に気持ちのいい、背中にぴったりくる椅子なのだけど、ボビンはそれに柔らかさが更にプラスされる。かつてCG誌でボビンが長期テストに使用されていたときも、当時の担当者の腰が、BXに乗っているときは痛くなくなったという話はもともだと思わせる。

>>出足遅いが、走れば天国
BX16はその数字が表すとおり1600CC。キャブレターでレスポンスは本来良いエンジンなのに、マッチングの悪いZF製ATとの組み合わせで、額面94PSもあるのに出足はとにかくモッサリしている。それでもそれまでの遅いシトロエンを考えれば充分速いと言われていたんだが・・・。ところが走り出してしまえばシトロエンは楽だ。フライホイールが大きいのか、なかなか回転が落ちない印象がある。シフトダウンのタイミングも良く、国産車と違いスピードが落ちるたびに4-3-2と順にダウンしていくので、どの速度域からもそこそこの加速が出来る(国産車は止まるまでシフトダウンしないのが多い)し、エンジンブレーキも効く。

>>捨てる覚悟の大旅行
僕はあいにくその当時金銭的に厳しい時期だったので同行は出来なかったのだけど、猫澤君と後輩YYのふたりで北海道へボビン号で出かけていった。20万で買ったお世辞にもキレイじゃないBX、何があるかわからない。壊れたら捨ててきてしまえ位のノリで。ところがBX、1週間・4000キロの行程をなんらトラブルなく走りきった。今回このページはもとオーナーのKO氏からその時の写真の提供を受けたけど、あの乗り心地であの雄大な風景の中をBXで走る経験はさぞや素晴らしいものだったろうと思うと、一緒に行けなかったことが心底悔やまれる。猫澤君はいまだに言う。素晴らしいグランドツーリングだったと。それこそ、一生忘れないほどの。


シトロエンBX16TRS はこんなクルマ
▲これが「腰痛を治す椅子」とまで言われた椅子。このあとのBXはどんどん固くなっていく。※
※本国仕様。

シトロエンといえば2CVDSがあまりにも有名だが、それらが販売されていた当初、車種が事実上それしかなかった。その両極端を埋めるべく2CVベースのちょっと上級なアミシリーズが作られたりしたものの、格差を埋めるには至らなかった。そこでシトロエンは、なんとDSのテクノロジーであったハイドロニューマチックを、1Lクラスの大衆車に採用して送り出した。それがGSシリーズである。素晴らしい実用性と乗り心地を持っていたGSは非常に高い評価を受け、15年の長きに渡り屋台骨を支え続けた。そのGS(と、改良型のGSA)の後継車となるべく1982年に登場したのがこのBXである。大きく見えるが実はGS/GSA とほとんど変わらないサイズのボディのノーズには、ついに空冷フラット4を捨ててプジョー系の血が流れた一般的なL4ユニットが横置き方式で積み込まれた。それまでのシトロエンとは一線を画す四角いデザインは、ベルトーネの作で、当時在籍したガンディーニの作。GS/GSAに比べてBXは飛躍的な進歩をとげ、軽量化・ボディの剛性アップ・部品点数の削減・ボディ外皮への積極的なプラスチック部品の採用などが図られ、信頼性も大幅に向上した。こうして登場した最初のBXは、俗にボビンタイプとも呼ばれ、通常の回転式のメーターを持たず、操作系もサテライトスイッチに集中しているなどの特徴がある。その後1986年にマイナーチェンジを行い内外装に大幅な変更を受け、さらに万人受けする姿へと発展した。日本にはボビンタイプのBX16TRSが5MTで輸入がはじまり、その後、AT(ZF製)仕様が追加された。なおBXはその後も本国のマイナーチェンジに合わせて改良された仕様が日本に導入され、それまで特殊な印象だったシトロエンを、一気に「マダムが買い物に使えるふつうの外車」にまで変えることに成功した。生産が終了しXANTIAにバトンタッチしても、そのXANTIAがC5にスイッチしても、BXはいまなおファナティクを多く持つクルマであるが、それはサイズが丁度良い・ハイドロである・適度にフランス車の濃さが残っている、などの要素を持つ「実用的趣味車」であるという点が大きい。もとよりシトロエンは車種が少ないが、CXは古すぎるし大きい。DSはクラシックカーの範疇。GS/GSAは空冷エンジンであるしトラブルの可能性が高い。2CVはベクトルが違いすぎる。ZXはハイドロがない。XANTIAはフランス車らしさが消え、しかもサイズがかなり大きくなった。そうなると、なおさらBXの存在が光るのである。

▲ぱっと見たら何が何だかわからないメーターパネル。初めて運転した夜、すごく困った。※

>>極楽GT
僕は、彼がボビンに乗っている間に遠州へ働きに行くことが決まり、暮らすためのie探しに姉と出かけた。姉は酔いやすいうえにその時体調が絶不調。でもBXではまったく酔わなかったし、たしか僕もタイトなスケジュールで出かけた筈だけど全然苦にならなかった。

>>R5との邂逅
どうしてそうなったのかは覚えていないけど、一度だけ、遠州に彼のボビンBXと僕のR5バカラで走ったことがあった。2台とも80年代を代表するフランス車で、しかも両方ともガンディーニのデザインだ。ゆらゆらと優雅に走るBXを眺めながら、ああ嬉しいな、こういうのって、って心底思ったのを思い出す。FBMとかは連なってはしるけど、それ以外では案外そうやってつるんで走ることってのは少ないものだ。

>>素晴らしいクルマ
とにかく素晴らしいクルマだった。そのあと親父がBXの中期型たる19TRSを買ったけれど、このボビン号はどこか70年代の頼りなさをまだそこかしこに残したフィーリングを持っていた。さらに、最後期のTZi系では随分印象が違ってしまう。あいにくボビンBXはほぼ絶滅してしまったけれど、もし、いい出物があったら(出来ればマニュアルで)、欲しいなあと思う一台である。

>>惜しいけれど
話を戻そう。結局その後ボビン号は猫澤君、後輩YYのもとを行き来して、僅かな間に数万キロの足跡を残した。でも、走りに支障が出るようなトラブルは、それこそ購入直後のくらいで、あとは無かったと記憶する。ただ、終わり頃になって、サンルーフが壊れたり、いろいろ出始めてきた。そんなこんなでいよいよ車検が来た。残念だけど、猫澤君は後釜にスッドの1.5を選んだ。トラブルもちょっと増えてきたし、ボビン号は乗り切った、という感じだったんだろうと思う。

▲北海道帰りに新潟に立ち寄る・・・そんなハードなスケジュールもこなしたBX。今は無き蒲原鉄道の古い車輌たちと。
▲釧路湿原をバックに。広すぎる。さすが北海道。
▲車高をいっぱいにあげるとこうなる。BXの車高調整は4段階で操作できる。一番下げると、それこそぺったんこ(右下写真参照)になる。二段目が通常走行、三段目が悪路走行用、そして最上段が上の姿基本的には走行不可。 ▲摩周湖の畔で。中期型以降では見られない、エキセントリックさがまだボビンBXにはあった。四角いが、見事にシトロエンデザインだ。
SPEC
全長*全幅*全高:
4230*1660*1365・
ホイールベース:2655mm
車重:1040キロ
エンジン:1579cc L4 OHC
最高出力:94ps/6000rpm

最大トルク:
14.0mkg/3250rpm
生産国:フランス
新車当時の価格:335万円
▲何度も行った併用軌道の犬山橋。パノラマカーと、BXの組み合わせ。 ▲これが中期型以降のBX。見慣れた姿だし、普通な感じが一気にアップする。
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●写真は特記(※)以外はすべて友人KO撮影。

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